2021-01-01から1年間の記事一覧

青空と

やたらと飛行機雲ができる日だった。 明日は雨なのかもしれない。

夜風

街角のパブ 夜中にパソコンと向き合う。 眠気覚ましのために少しだけ開けた窓から冷たい空気が流れ込んでくる。飲む気もないけれどショットグラスに注いだウイスキーが風に揺らいで時々匂いをたてる。デスクに置いたコーヒーの木の葉が揺れる。何年も前に行…

午前3時のふたり

ふたりで2時間ほど飲んで、次どうしようかといいながら歩く。 酒を出す店はどこも閉まっているしコーヒーを飲めるところすら開いていない。30分ほど歩きまわって疲れたところで、知り合いが飲んでいるというのでそちらに合流する。 そこから2時間ほど経った…

思い出せないこと

久しぶりに雨が降った。 僕の仕事部屋は10階にあって眼下に割と大きな緑地が広がっているのが見える。水たまりができるほどには雨脚は強くない。遠くには山の斜面に建った家々の屋根が霞んでいる。 この2ヶ月ほどずっと忙しく、いい加減疲れた。疲れたとい…

小鳥

しばらく眺めていたけれどその小鳥はまったく動かず、もしかしたらオブジェなのかと思い始めたころ、見えない糸に引っ張られるように飛んでいった。 僕の方は一度も見なかった。 ただ僕が一方的に見つめているだけだった。

子どものころ、涙がうまくコントロールできなかった。緊張しては涙が滲み、退屈なときになぜか一粒涙がこぼれた。床屋の古ぼけたいすに座った瞬間に涙が出てきて驚かれたこともあった。涙は規則性もなく出てきた。 今から思えば涙がコントロールできなかった…

嵐が来るのよ、と彼女は言った。 天気予報にはそんなことは出ていない。僕がそう言うと、彼女はしばらく黙って僕の顔を眺めたあとに、あなた何もわかってないのねと言った。 たしかに僕は何もわかっていないのかもしれなかった。仕方なくビールを飲もうとし…

雨上がりの日

3日ほど雨が続いたあとに秋がやってきた。 まだぼんやりとしたかたちでゆらゆらと揺れていたけれど、それは間違いようもなく秋だった。 そうして僕の眠りは少しだけ深くなった。

偽物

スターバックスでいつものようにドリップコーヒーを頼む。 アルバイトの女の子がこんなに暑くてもホットコーヒーなんですね、とにこやかに話しかけてくる。 アイスコーヒーは苦手で、と僕は答える。なんか偽物っぽくて。 そう言うと、女の子は少し戸惑って、…

雨と猫と僕

ジョギングの途中で雨に降られて屋根付きのベンチで雨宿りをしている僕の足もとを猫が横切って行った。 雨も僕も存在していないような歩き方だった。