偽物
スターバックスでいつものようにドリップコーヒーを頼む。
アルバイトの女の子がこんなに暑くてもホットコーヒーなんですね、とにこやかに話しかけてくる。
アイスコーヒーは苦手で、と僕は答える。なんか偽物っぽくて。
そう言うと、女の子は少し戸惑って、偽物?と繰り返す。
うん、半袖のワイシャツとか、スリッパとかも。
僕がそう言うと、笑顔が少しだけ困ったような表情に変わる。
僕も曖昧に笑ってコーヒーを受け取る。
嫌いなものは、たいてい好きなものから何かが欠落したものだ。
熱や袖や踵や、無くていいよう気もするのにそれが無くなった途端に対極にあるものに変わってしまう。
好きとか嫌いってきっとそういうものだ。