思い出せないこと

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久しぶりに雨が降った。

僕の仕事部屋は10階にあって眼下に割と大きな緑地が広がっているのが見える。水たまりができるほどには雨脚は強くない。遠くには山の斜面に建った家々の屋根が霞んでいる。

この2ヶ月ほどずっと忙しく、いい加減疲れた。疲れたというより、飽きたというほうが近いかもしれない。

飽きたというのを言い訳にしてずっと雨を眺めている。

照度計が狂っているのか、ひとつだけぽつんと外灯がついている。それが何かを思い出させるような気がしてしばらく考えてみたけれど、結局記憶は蘇ってこない。

人は見たいものしか見えないし、聴きたいことしか聴こえない。僕は思い出したくないのかもしれない。