2007-01-01から1年間の記事一覧
台湾 | 寺 - 台湾の寺はまるで小さなテーマパークのようだった。
いつの間にか僕の足下では風に舞った枯葉がカサカサと音を立てていた。いつもの年と同じように冬は僕らが気づかないうちにこっそりとやってきていた。冬はときおり強い風を吹かせ、わずかばかり残っていた木の葉を散らせた。あるいは乾いた雪をほんのちょっ…
このところ深夜に帰宅する日が続いて、僕は真夜中にひとりパスタを茹でて食べてたりする。 スパゲティは不思議な食べ物だ。土曜の午後には土曜の午後の味がする。木曜の深夜にはきちんと木曜の深夜の味がする。 なぜだろう。
市場は香辛料や醤油や油やその他よくわからないいろいろなものが入り交じった匂いで満ちていた。色や形はいくら見ていても見飽きなかったが、匂いの洪水には少しばかり参ってしまった。
海岸の少し濡れた砂の上で、小さな足跡を見つけた。潮はもう引きはじめている。やがて砂が乾き、風が吹き始めるだろう。そうすれば、それはすぐに消えてしまう。晩秋の日曜の午睡で見た短い夢のように。
アイルランドを構成するもの。 石と緑。
城の中に入ると、冷たく淀んだ空気が僕を包んだ。再現された中世の生活は、少しばかりアンビバレントな感覚を抱かせた。 積もった埃、染み込んだ獣油の臭い、そして冷たい石の壁。それらは、歴史の想像力をかきたて、一方では新月の真夜中のような行き場のな…
あのころ彼はよく出張をした。長くはない。二泊三日とか三泊四日とかの短い旅だ。私は決まって夕食の買い物先から電話をかけた。帰ってから食べたいものある?彼はカレーライスとか焼きそばとかコーラとかあるいはチョコレートだとか、子供のようなものばか…
Birrの町に着いたのはもう5時を回っていた。結局止むことのなかった雨の粒はだいぶ小さくなっていたけれど、なんだか一日ずっと動くワイパーばかり見ていたような気がした。そんなわけで、予約していたゲストハウスのベルを鳴らしたときには、僕の頭の中で…
その犬は一度も僕のことを見なかったし、女が顔を上げることもなかった。 僕がただ彼らを見ていただけだった。
夕方4時、石垣の陰に座って僕は誰もいない通りを眺めていた。 太陽はまだ輝きを失う気配を見せない。
漁師町の夜は、まだ始まったばかりだった。
そのしみはまるでドーナツを食べ過ぎてすっかり太ってしまったミッキーマウスみたいな形をしていたが、もちろんそんな楽しいものではなかった。部屋には動くものは何もなかった。まるですべてが無声映画の中の出来事のように感じられた。どこにも字幕が出て…
ポルトガルの靴屋のディスプレイはカオスに満ちている。 一足ずつではなく、片方のみを飾るのは、狭いスペースでより多くの靴を見せようという目的なのだろう。 だがその並べ方にはまったく規則性というものが見あたらない。履き物の種類も色も向きも統一性…
大学の掲示板でアイスクリーム売りのアルバイトを見つけたのは昨日のことだ。とっくに夏休みが始まっていて、割の良さそうなバイトにはどれも決定済みの赤いスタンプが押してあった。僕は掲示板を右上から順番に丁寧に眺めていき、左下まで来ると、そのまま…
初めて入ったカフェで2時間ほど本を読んだ。 その間に2組の客がやって来て、帰っていった。 雨はいつの間にかあがっていた。
通りには誰もいない。
貝殻がついたストラップをひとつ買った。
低いどっしりとした瓦屋根のせいか、家の中の温度は外に比べると3度ほど低い気がした。
スターバックスでダブルチョコレートドーナツを囓りながら、フーコーを読んだ。うっかりページにつけてしまったチョコレートのしみは、少し間の抜けたロバの顔をしていた。
潮風と煙のにおいのする街で。
照明には、静かな灯りと、そうでない灯りがある。
塀が長くずっと続いていたから、僕はそれに沿って歩き続けた。
郵便受けは、待ち続けている。
2ヶ月ぶりに髪を切った。ひどく混んでいて、僕の担当は何人もの客を担当していて、ちょくちょく席を外した。その度に別の人がやってきて、僕に話しかけた。そんなとき、僕はいつも戸惑ってしまう。
少しずつ夕暮れが近づいて、風に冷たい湿り気が混じるころ。
クローゼットを覗いてみて、きちんとした白いワイシャツを1枚も持っていないことに初めて気がついた。あるのは、ボタンダウンのオックスフォードシャツだけで、通夜の席に適しているとは思えなかった。
衝動買いしてしまったPolaroid a520で最初の一枚。
技師が手を離すと、ラジオゾンデはかなりのスピードで上昇していった。誰もが風船っていうのはふわふわとゆっくり上がるものだと思っていたから、すこし戸惑っているようだった。子供が「わぁ」と発した言葉のあとにみんな我に返ったように手を叩いたが、そ…