2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

海を見る/アイルランド 僕が居眠りをしている間にすぐそこに夏がやってきていた。

散歩

日曜日の夕方、ずいぶん長い散歩をする。歩いている間に陽は少しずつ傾いていって、太陽は角度に反比例するように輝きを増し、僕は目を細めて歩く。通りかかったカレー屋に入り、狭い路地を抜け、いくつか神社を見つけたり、満開のバラを見たり、古い建物を…

図書館

海のそばに建つ古い建物に入る。 床も階段の手すりも黒く光っていて、古い木と本の匂いがする。あるいは、それは堆積した古い時間が放つ匂いなのかもしれない。 誰もいない空間に西日が差し込み、背表紙が照らされる範囲が少しずつ広がっていくのを僕はじっ…

夜の公園で。

夜は深まりを見せ始めていた。僕は小さな公園のベンチに寝転がって星を見ていた。昨晩ほとんど寝ていなかったせいでひどく眠かったが、眠りはなかなかやってこなかった。少しだけ目を閉じている間に星は消えていた。空には霞がかかっていて、それが濃くなっ…

図書館

Y. 気がつくと僕はいつの間にか居眠りをしていたようだった。空はやけに眩しく青く輝いていて、目を開けるのが辛かった。細めた目をそのまま閉じているうちに、テラス席を吹き抜ける風が心地よくてまた眠ってしまった。 次に目が覚めると、テーブルの上には…

海と。

海の見えるカフェでアイスティーを飲む。ひどく開放される。そんなことが前回いつだったか思いだせない。そういう僕に彼女は言った。いいと思うよ。そういうのはときどきあれば。晴れた五月の海岸に行けたら。

葬儀と太陽

教会/パリ5月の土曜日にふさわしい明るい日差しが新緑を照らしている午後に、僕は鏡を見ながら黒いネクタイを締めている。さっきまで黒い靴下が見つからずに引き出しをひっくり返していたせいで、時間の余裕はなくなっている。だけどネクタイはうまく結べず…

シーザーサラダの夜

パブ/アイルランド 仕事が終わったのは夜の十時で、僕は少し疲れていた。 エレベーターを降り、通りに出てみると、街には信じられないほどに人が溢れていて、食事をしようと覗いた店はどこもいっぱいだった。 仕方なく入ったホテルのバーも喫煙席しか空いて…

花を買う

カフェ/パリバスを降りたところでふと思い立って花屋に入る。 花屋の店頭には小さな水槽が置かれていて、ウーパールーパーが一匹浮かんでいた。ウーパールーパー? それはなんだか人類が登場する前に滅んでしまった生き物のように思えて、僕は一瞬頭が混乱…