2010-01-01から1年間の記事一覧

シードル

小さなレストランでオムレツを食べながらシードルを飲む。

水門

冬の始まりを歩く。

迷路

出口が見えてきたと思ったら行き止まりだったり、行き止まりだと思ったら明るい光が漏れていたり。 相変わらずそんな日々が続く。 ただ、寒くなるのが少しうれしい。

魚たち

僕は手すりの出っ張りに腰を下ろし、水槽の前で楽しそうにはしゃぐ人々を眺めていた。 魚たちは我々とは別の次元で物事を考えているように見えた。

ガラス扉を開け放ったカフェでコーヒーを飲む。 澄んだ空気の匂いがする。

携帯電話

10年ほど使い続けた携帯電話のキャリアを変える。 この10年間、ずっと連絡先に載っていたけれど一度も連絡したことのない電話番号を見つめながら、もう一度この番号を押すことがあるだろうかと考える。 もちろん電話をかけたところで、10年前と同じ人が出る…

靴を磨く

急に靴を磨こうと思い立って、古いTシャツをハサミで裂く。 クリーナーで丁寧に汚れを落とし、クリームを塗って丁寧に磨く。 右の靴を磨き、左の靴を磨き、布を変えてもう一度繰り返す。 玄関のひんやりとした空気が心地よくて、僕はいつまでも手を動かし続…

no title

8月が終わったらいろいろやろうと思ってたことがあったのに、何も進まない。 夏の終わりはいつもそんなものだけど。

夏の終わりの夕食

僕はスーパーで見切り品の桃と梨をかごに入れ、それからメロンとパイナップルをしばらく眺めて結局パイナップルを追加した。 ちょっと迷ったけれど、小さな葡萄も買った。 洗った果物をテーブルの上に並べる。 それだけで幸せな気分になる。 夏の終わりに一…

no title

不思議なものも見慣れると不思議ではなくなる。

パリ | 影 - 子どものころ、眠りにつく瞬間がどうなっているか知りたくてたまらなかった。 いつからが夕方でいつからが夜なのかまわりの大人に訊ねてまわった。 空が曇って最初の雨粒が落ちてくるときがいつなのか気になった。 境界はみんなが思っているほ…

夏の夜の不眠

眠れないままに缶ビールのプルトップを引く。 もうすぐ夜が明ける。 僕の眠りはどこに消えてしまったのか。

パリのアインシュタイン

パリ | アインシュタイン - 4月に村長に就任したという男が出てきて、名刺を交換する。 色あせたジーンズとポロシャツに踵のすり減ったブーツという格好は自分でもひどいと思ったけれど、まさか村長が待っているなんて思わなかったから、そこは目を瞑って…

夕立

パリ | 夕闇が迫る - 西に住む女の子から一言だけメールが届く。 「すごい雨と雷」 30分後に僕の街にも雨が降る。 僕は窓にぶつかる雨の粒を見ながら橋を渡ったところにある西の街のことを思う。

プール

夏の終わり。 プールはその役割を果たしたように、風によるさざ波だけを浮かべている。

夕暮れ

パリ | 夕暮れ - むやみに歩き回っているうちに日は沈みかけていた。 何かに追いかけられるように僕は歩いていた。 もちろん振り返っても僕を追う者など誰もおらず、そこにあるのは長く伸びた僕の影だけだった。

貸し切り

どういうタイミングなのか、真夜中の都市高速には一台も車が走っておらず、街灯とビルの明かりだけが現実世界がそこにあることを表しているように思えた。 雨はもう上がっていて濡れたアスファルトがきらきら光っていた。 「世界が貸し切りみたいね」と彼女…

no title

僕はベッドに寝そべって天井を見上げていた。 考えるべきことがたくさんありすぎて、どこから手をつけていいかわからなかった。 西部に放り込まれた開拓民みたいだった。 違っていたのは、彼らには希望があり仲間がいて、僕にはそのどちらもないことだった。…

悪夢

目が覚めると僕は床に敷いた薄いマットの上にいて、ごわごわするブランケットにくるまっていた。 外はもうすっかり明るくなっていて、壁に掛けた時計は7時を回っていた。 ひどく嫌な夢をみていた。 おぞましいといってもいい内容だった。 僕は罰を受けてい…

模様

急に吹き込んだ風がブラインドを揺らし、窓際に置いていた一輪挿しを倒した。 机の上にこぼれた水が置きっぱなしになっていた名刺や書類やカメラを濡らしていく。 僕はそれをしばらく眺めていた。 ぼんやりとして、ティッシュペーパーを引っ張り出すことも書…

月曜の朝

ポルトガル | カフェの男 - 2日間伸ばした無精髭を剃る。 月曜はきらいじゃない。

再会

フィンランド | 湖中の家 - 橋の上にはサックスを吹く若者とそれにあわせて踊っている2人組の中年の女がいて、僕はその風景をぼんやりと眺めていた。 空には満月が浮かんでいたけれど、歓楽街のネオン街が眩しすぎて月の輪郭は少しばかり滲んで見えた。 彼…

なくしたもの

フィンランド | Petäjävesi - なくしちゃいけないものが見つからなくなってひどく焦る。 なんのことはなくて、それは机の上においたコースターの影に隠れていただけでわりとすぐに見つかったのだけれど、ひどく落ち着かない気分になる。 今までたくさんのも…

パフェ

アイルランド | パブ - 夕方の5時から酒を飲むのもどうだろうと思うけれど、11時まで飲み続けたあげくにいい歳をした3人が通りに置かれたベンチに座ってパフェなんか食べてるというのもいかがなものかと思う。

午後の電話

フィンランド | Verla - 仕事場の電話が鳴り、なんとなく嫌な予感がした僕は居留守を使う。 ベルが鳴り止んでやれやれと思っていると、携帯が震えはじめる。 僕はディスプレイに表示された名前を確認して、通話ボタンを押す。 「ひょっとしていま仕事場に電…

知り合いの会社が新しい支店を開き、オープニングパーティに呼ばれる。 何も考えずいつものように穴の空いたジーンズに襟がよれたTシャツで出かけ、みんなスーツを着ているのを見て、ちょっと失敗したなと思う。 小さなフラワーアレンジメントを渡し、2人…

行く先

レストランは海のすぐ側にあって、ガラス張りの二階席からは沈みゆく夕陽と行き交う船がよく見えた。 ジーパンなんか履いて来なきゃよかったな、と彼女は言った。 よく似合ってるけど、と僕は言った。 実際その細いジーンズは彼女によく似合っていた。 少な…

彼女の仕事

ポルトガル | 路地 - 友人から一行だけのメールが届く。 「いま仕事中。小学生と鬼ごっこしてるところ」 こないだのメールは、「いま仕事中。フランス人だと思って期待したのに、ふつうのおじさん」だった。 彼女がいったいどういう仕事をしているのか、い…

海へ行く

祭のあとの寂しさは誰も消すことができない。

土間の小舟

ふと思い立って、休みをとる。 どこへ行こう。