誰もが知っていることだけど、図書館には門番がいる。 古い小さな図書館の隅っこに彼は座っている。二階の閲覧室へと続く階段の横に古ぼけた木製の椅子を置いて、大抵じっと高い天井を見つめている。あるいは天井のしみの数を数えるのに飽きた時には、正面に…

【１】ワゴンに乗った音楽隊 黄色いワゴン車が目の前に止まり、中から音楽隊が降りてきた。全部で12人だった。最初の１人目がぴょんと飛び出すように降りてきてからずっと指を折りながら数えていたから間違いない。念のためにもう一度数えてみたら、やっぱり…

ホームセンターでハムスターの寝床を探しているときに、電話が鳴った。僕は両手に３つの寝床を持ってどれにしようか選んでいるところだったから、ジーンズのポケットに突っ込んだ携帯電話を取り出すのに少しばかり時間がかかってしまった。電話のベルは、餌…

５月。よく晴れた週末の午後。さらさらと風の吹くベランダに僕は椅子を出す。彼女は静かに微笑んで椅子に腰をおろす。僕は古い洗いざらしのシーツを彼女の首にふわりと巻きつけ、霧吹きで彼女の髪の毛を濡らしていく。小さなたくさんの水の玉がきらきらと虹…