花を買う

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カフェ/パリ

バスを降りたところでふと思い立って花屋に入る。 
花屋の店頭には小さな水槽が置かれていて、ウーパールーパーが一匹浮かんでいた。ウーパールーパー? それはなんだか人類が登場する前に滅んでしまった生き物のように思えて、僕は一瞬頭が混乱する。
 いらっしゃいませという声に顔を上げる。
えーっと、と僕は言う。花束を。
どんな感じにしますか?と聞かれ、たくさんの種類の花があることにはじめて気づく。視線を2往復させ、そのオレンジのバラを、と答える。
僕が選んだバラにラッピングがかけられる間、僕はまたウーパールーパーを眺める。何度見てもそれはひどく違和感がある存在だった。眺めている間に、自分が水槽に入れられた存在であるような気がしてきた。
バラを受け取り外に出ると混乱は少し収まった。日はだいぶ傾いていたけれど太陽の光はまだ十分に暖かく吹く風は心地よかった。気持ちいい春の夕暮れだった。