ハンカチ


アイルランド | 雨宿りのパブ
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クリーニングに出そうと思ったコートのポケットにハンカチをみつける。
そういえばあの夜から見てなくてきっとどこかでなくしたんだと思っていた。
ふと、もうずっと昔に、いつもハンカチを2枚持ち歩いていたことがあったことを思い出す。
思い返すと不思議だけれど、そのころやたらと女の子に泣かれていた。
まるで僕といると泣かなくちゃいけないというルールでもあるように、みんなが泣いた。
それは特定の女の子ではなくて、恋人も、友だちも、初めて会った子もいた。
僕が何かをしたわけでもないし、彼女たちが一様に辛い立場にあったわけでもないと思う。
それでもみんななぜかよく泣いた。
僕はそのたびに困ってしまってハンカチを差し出すのだけれど、何度も手を拭いたハンカチを出すのは気が引けて、いつからか洗い立てのハンカチを1枚余分に持つようになった。
あれはいったいなんだったんだろう。