カフェにて


まったくアイルランドらしく、急に雨が降りはじめ、僕は小さなカフェに駆け込む。
昼過ぎで、近所に住んでいるらしい老人が何人かランチをとっている。
店員はときどき彼らに話しかけ、お茶のお代わりを進めたり、誰かの体の具合なんかを訊ねたりしている。
いつものように朝食をとりすぎた僕はランチを食べる気にもなれず、スコーンをとり、お茶をもらう。
傘の雫が床を濡らしている。
母親に連れられて入ってきたピンクのレインコートの女の子は真剣にケーキを選んでいる。
そんなにたくさんの種類があったっけ?と思って首を伸ばしてみるけれど、僕の席からはよく見えなかった。
ずいぶん長い時間をかけてひとつ選んだあとも、女の子はガラスケースを覗き込んでいた。
そういうのって田舎町の小さなカフェの魅力だと思う。