水映

 製銅所は小川のすぐ脇にあった。小屋の外側には小さな水車が取りつけられていて一日中ゴトゴトと音をたてていた。むかしは動力に使われていたであろうその水車は今ではどこにもつながっておらず、水の流れにしたがってただひとりで回り続けている。
 製銅所から長年にわたって流れ出した銅は川底に沈み、本来は透き通っているはずの流れをちょっと不思議な緑色に染めていた。よく晴れた日がしばらく続いた昼下がりには小川がふっと流れを止めることがあり、水車の回転は徐々にゆるやかになり最後にギーという大きな音をたてて動きを止めた。そんなときには水面は水鏡となって製銅所と水車を写した。もちろん製銅所も水車もほのかに緑色に染まっていて、土手の草むらに座ってしばらくそれを眺めていると決まって息苦しくなり、僕は水面の水車めがけて小石を投げ込んだ。