2010-01-01から1年間の記事一覧

空を見る

日本 | 信号機 - たぶん上空には強い風が吹いていて雲がすごい速さで流れていった。 青空が顔を見せたかと思うと、また雲がやってきて、そしてすぐに去っていった。 僕はさびれた駅の前に置かれた小さなベンチにひとり座り、そんな空を見ていた。 ひどく俊…

ハンカチ

アイルランド | 雨宿りのパブ - クリーニングに出そうと思ったコートのポケットにハンカチをみつける。 そういえばあの夜から見てなくてきっとどこかでなくしたんだと思っていた。 ふと、もうずっと昔に、いつもハンカチを2枚持ち歩いていたことがあったこ…

may

ポルトガル | ベンチ - いつだったか、もうずいぶん昔の話。 僕が暮らしていた部屋に花が届いた。 たしか、薔薇と百合とかすみ草だった。 僕に届いたわけではなく、僕の部屋に遊びに来ていた女の子に届いた花だった。 部屋には花瓶なんかなくて、陶器製のビ…

Hameenlinna

フィンランド | Hameenlinna - バスに揺られてチャンドラーを読んでいると携帯が震えた。メールには、「こっちですんごくいやなことがあったから、そっちにごうりゅうする。どこ?」とあった。彼女がひらがなでメールを書いてくるのはひどく機嫌が悪いとき…

Drumlane

アイルランド | Drumlane Monastery - 古本屋で買ったレイモンド・チャンドラーには煙草の匂いが染み込んでいて、ページをめくるたびに僕の鼻をくすぐった。

記憶の構成

フィンランド | 通り - ときどき彼女の顔が思い出せなくなった。 輪郭や瞳や口元やパーツはきれいに思い浮かべることができるのに、顔全体を思い出そうとするとぼやけたようになってうまく像が結べない。 そんなときは音楽を聴いた。 昔聴いていた曲をかけ…

入り江

アイルランド | 入り江

天気予報の憂鬱

アイルランド | 青と緑 - 午後から雨だと天気予報がいう。 それでも僕は傘を持たずに出かける。 理由はないけれど雨は降らない気がした。 もちろん雨はしっかりと降り、僕は濡れる。 少しだけ気分が楽になる。

晩餐会

フィンランド | 晩餐会の準備 - もう2ヶ月以上も髪を切ってなくて、自分でも少しうんざりしはじめている。

no title

リスボン - しばらく改装中だった店が少し前に再開し、久しぶりに飲みに行く。 そこは僕が知っているかぎり一番うまいビールを出す店で、急に何日か続けて閉まっていた時にはちょっと心配した。 ドアを開けると客はまだ誰もおらず、僕はひとりでビールを飲む…

猫の時間

もう夜中の1時半だった。 店を出た僕たちはいい加減酔っていた。 空は黒く青く輝いていて、その分空気は冷たかった。 すぐにタクシーに乗るつもりだったのが歩き出したのはなぜだろう。 僕たちはぽつりぽつりとしゃべりながらゆっくりと歩いた。 この先に神…

相談という名の愚痴

仕事場の電話が鳴る。 意外な声が聞こえてくる。 僕は飲みかけのコーヒーをデスクの上に置いて、彼女の言葉に耳を傾ける。 彼女の話は、僕が15秒に一度ほど挟む相槌にうながされながら、20分ほど続いた。 どこにも出口のない相談だった。 たぶん世の中ではそ…

教会の灯り

このごろ僕はひどく眠い。 なのに、朝早くに目が覚めて、もう一度眠ろうとベッドの中でごろごろしていたりする。 春なのだ。

廃墟に咲く花

床に寝そべっていてそのまま眠ってしまう。 寒くて目が覚めたころには、月が高く昇っている。

no title

真夜中のラジオは少し悲しい。

春が来て、去っていく人がいる。

アイルランド

はじめてアイルランドをレンタカーで走ってこの風景に出会い、僕はすっかりやられてしまったんだった。

100315

ポルトガル | 路地 - 急に思い立って机の上を片付ける。 心の整理はつかない。

no title

冬空に一羽舞う鳥を見た。 ひどく孤独な飛び方だった。

本を読む

昨日からずっと本を読み続けている。 1000ページもある分厚い本を持つのに疲れて書見台に載せたり、腹ばいになってみたり、姿勢を変えながら読み続けている。 ときどき他の本に浮気をしながら、外へ出ることは一歩もなく、食事と風呂と睡眠以外は活字を追っ…

no title

露で濡れた草は僕の足元にまとわりついた。 青い匂いがした。

ナザレの女たち

ホテルの下では女たちが駐車場をさがす観光客を当てにして、客引きをしている。 僕はそんな女たちをぼーっと眺めていた。

no title

教会の外では雨が降り続いている。

lisboa

リスボンはゆっくりと老いている。 かつての貴族が目に見えない速度で没落するときに屋敷の活気が少しずつ失われ見えないところにゆっくりと埃が堆積していくように、街の何かが失われていく。 しかしそれは嫌な朽ち方ではない。

オレンジの木の下で

女たちはオレンジの木の下で止むことのないおしゃべりをする。 僕はカフェの固いいすに座ってビールを飲みながらそれを見ている。 ときどき彼女たちを通りかかった知り合いに手を振り、挨拶をし、そしてまたおしゃべりに戻る。 僕はただそれを見ている。 ビ…

100211

たとえば壁にかけられた色の褪せたコピーのシャガールとか、あるいはもう誰も泳ぐことのない秋のプールに浮いた枯れ葉とか、昨日の夢に出てきたのはそんなものばかりだったような気がするけれど、僕はちゃんと規則正しく起きて朝食をとってるし、日の光もた…

100209

本を一冊だけ持って − 携帯電話やら家の鍵やらUSBメモリやら、そんなものはすべてどっかに放り出して − たまたま見つけたベンチに座ってぼんやりと一日を過ごしたい、というのがこのごろの僕のささやかな夢だ。

100208

墓地を風が吹き抜ける。

あお

ギリシャ正教の教会であおに染まる。

100206

ソファで眠ってしまって、目が覚めたのは夜中の2時過ぎだった。 少し前に電話のベルが一度だけ鳴って切れた。 ある時期、電話をかけて最初の呼び出し音を聞いただけで、相手が不在かどうかわかったことがあった。 まだ携帯電話なんてなかった時代のことだ。…