2007-01-01から1年間の記事一覧

ダスト・シュート

いつからか知らないけれど、そこにゴミを捨てるのは禁止されていた。たぶん僕が小学校に入る少し前からじゃないかと思う。入学してからシューターの使用を禁止する放送や張り紙を見たことはないし(僕はそのようなあまり役に立ちそうにない記憶についてはひ…

070322

むかしの人々は夢は外からやってくると考えていた。僕が彼女の夢を見るのは僕が意識下で彼女のことを思っているからではなく、彼女が僕のことを強く思っているからだ、と。そういう意味では夢は一枚の葉書だ。内容は受け手ではなく、送り手が決める。楽しい…

哲学者の道

町で噂の哲学者が丘から続く長い一本道を降りていく。道には白い石が敷きつめられているけれど、それはところどころごつごつとしていて哲学者のサンダルの爪先にひっかかった。途中ですれ違った白い山羊を引いた老婆は哲学者の顔をじろじろと見つめ、それか…

鳥かご

天井からは幾十もの鳥かごが吊り下げられていた。大人が立ったまま入れそうなものもあり、キャラメルのおまけにでもついてきそうなものもあった。底一面に薔薇のレリーフが彫られた巨大な真鍮製の鳥かごがあり、竹ひごで編んだシンプルな直方体のかごがあり…

うたた寝

ソファで眠ってしまったせいで体の節々が痛かった。首がうまく曲がらず、右手はなぜかしびれていた。 目が覚める前に夢を見た。あまりうれしくはない夢だったが、もう一度見てもいいと思える夢だった。つらくてももう一度会いたいと思うことだってある。

冬、午後、日曜

冷たい風のなかを歩き疲れたころ、アイリッシュ・パブを見つけた。腕時計は2時半を指していて、僕はひどく腹が減っていた。 運が良いことにまだランチ・サービスは続いていて、僕はシェパーズ・パイを頼む。ギネスをハーフ・パイントだけ頼もうかと少し迷っ…

過ぎる

また知らないあいだに新しい年がやってきて、望んだわけでもないのにひとつ歳を重ねた。 もちろん、僕は知っている。 望むと望まざるとにかかわらずやって来るものと過ぎ去るものがあることを。