百数十年に一度という月はたしかに美しかったけれど、月の光で作られた影はもっときれいだった。
僕は外に出てしばらく月の影を眺めていたけれど、さすがに寒さに耐えられなくなって部屋に戻った。
灯りをすべて消してブラインドを上げてしまえば、また月がきれいに見えた。
首をひねって振り返れば、僕の影ができていた。
なんだか偽物みたいな影だった。

朝焼け

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いつも明け方に目が覚める。たいていはいやな夢を見ている。今日もそうだった。
薄いカーテン越しに朝焼けの空が見えた。朝焼けは寝不足の目に眩しすぎた。目の奥がしくしく痛む。
北に位置するここでは一日が早く始まる。短い夜の間に考えられることは少ない。それでも思うことはある。
そろそろ帰ろう。