夜明けの雨

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明け方に雨が降った。
その音で目が覚めた。
運河に雨粒がいくつもの波紋を作っているのがホテルの部屋から見えた。
身体を遠いところに運べば何かが変わりそうな気がしたけれど、そう簡単にもいかない。
昨日の夕暮れ、運河を見ながらそんなことを考えていたことを思い出した。
雨は30分ほどで止んだ。
僕は窓を閉めてベッドに戻った。
今ではこの小さなベッドだけが僕の居場所だ。

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ひとつずつ失われて行くものに抗いたくなるけれど、時の流れだけが正しいと信じるしかないのかと思う。けれども、消えていくつながりはどうしようもなく耐えがたく、眠れない夜にはウイスキーを舐める。間もなく夜が終わり新しい日がやってきて、朝の光だけはどんな人間にも平等に降り注ぐ。だけど悲しみは消してくれない。そんな朝なんて来なければいいと思う。眠りはまだ来ない。

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夢の中で僕はすごく焦っている。
最終のバスに乗り遅れそうになっている。見覚えのない住宅街を酔って走っている。初めて通る道なのにこの先にバス停があって、もうすぐバスが来ることを知っている。間に合わないかもしれないと焦っている。
不意に電話が鳴ってメッセージが届く。足を止めてポケットを探るけれども、僕の電話はない。バスが来る。焦って走りだすと、またメッセージが届いたことを知らせる音が鳴る。走りながらポケットを探る。
そこで目が覚めた。
夢が何を意味してるかなんて、髭を生やしたオーストリア人の知恵を借りなくたってわかる。
想い。