捨てる

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クローゼットをかき回していらない服を選り分け、床に積み重なっている本を箱に詰め、埃をかぶった書類をひとまとめに括る。ここ何日かひたすら捨てるものを探している。
見るともなくつけっぱなしテレビのニュースが、大きな台風がやって来ると言う。
強い風に思いを馳せている時に、気づいていなかったことに気づく。気づかなければよかったと思う。
もっといろんなものを捨てられたらと思う。

梅雨の終わりの電話

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教会/パリ

遠くで雷が鳴っていて、梅雨の終わりを感じる夜。稲光がカーテンの隙間から部屋を照らし出した瞬間に携帯が震えて僕は驚く。か細い声は雨の音にかき消されそうで、携帯電話を強く握りしめる。伝えたいことも聞きたいこともたくさんあったけれど、時間はあまりにも短い。

まだ夜はたくさん残っていて、僕はウイスキーを取り出して古い映画をぼんやり眺めている。

雷はいつのまにか消えていたけれど、明け方にはひどい雨が降った。何かの塊をぶつけるようなひどい雨だった。

二日酔い

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ギネス/アイルランド

ひどい二日酔いで目が覚める。もう外は明るくなっていて、きちんと閉められていないカーテンの隙間から漏れる光が瞼も眼球も透過して頭蓋骨の奥深くまで差し込んでくる。

日曜日なんて無くなればいいと思う。

嘘つき

いつものように仕事場に行き、いつものようにパソコンを開く。

そしていつものようにスケジュールを開き予定を確認して、そこに休みという文字を見つけ、それがもう必要なくなった情報だということがうまく理解できず、僕はしばらくぼんやりする。

いくつかの果たせなかった約束を思い出す。果たせた約束とどちらの数が多いかなんて仕方ないことを考えてみたりする。

カレンダーからひとつずつ予定を消していきながら、冬の海を思う。そして春の海を思う。

朝の天気予報は雨が降ると言っていた。だけど窓の外に広がる空は薄日が差している。みんな嘘つきだと思う。そして、僕は嘘つきだと思う。

もう一度果たせなかった約束を思う。言えなかった言葉を思う。

夢が叶えばいいなと思う。