041019

 また雨が降っている。雨粒が窓ガラスにぶつかる音を聞きながら僕はウイスキーを舐めている。

 この前の日曜日に行った海を思い出していた。もうとっくに夏は終わってしまったのに、浜辺には思いのほか人がいてそれぞれにバーベキューをしたり、ジェットスキーをしたり、犬を走らせたりしていた。僕は来る途中で買った小さな折りたたみの椅子を広げて、海に向かって座り、本を読んだ。ときどき小さな魔法瓶に入れてきたコーヒーを飲んだ。空には鳶が舞っていた。アルミと布でできた小さな椅子の座り心地は当然のことながらあまり良くなくて、僕はときどき立ち上がって腰を伸ばした。2回ほど海岸の端から端まで歩き、貝殻やガラスのかけらを拾ったり、ヤドカリを眺めたり、打ち上げられた木ぎれを波打ち際に立てたりした。太陽が少し傾きかけて夕暮れの最初の光が届くころ、僕は本を読み終わった。秋の夕暮れにしては柔らかい日差しだった。

 陶器製の小さなワイングラスに注いだウイスキーを僕はもてあましている。さっきまで見ていたビデオでは、乾いた大地に太陽がやけに白い光を投げかけていた。ウイスキーを水みたいに飲み、すぐに腰の拳銃に手をかける男たちがたくさん出てくる古い映画だ。僕は小さな画面を見ながらストーリーとは全く関係ないことばかり考えていた。

 雨は、まだ止まない。