040604

 この冬はずいぶん忙しかったから春になったら少しのんびりしようなんて思っていたけれど、もちろん春には春でやるべきことがたくさん出てくるわけで、一日だけ仕事をさぼって映画館をはしごした以外はとりたてて変わらない日々を過ごしていた。4月が過ぎてもどこからか沸いて出てくる雑事に追われて、かといって睡眠時間を削られるくらいまで追い込まれるほどの忙しさでもなく休日にはだらだらと古い映画を見たり本を読んだり、そんなふうにして時間はいつの間にか過ぎていく。

 携帯電話を壊したのは5月の終わりのことで、僕の過ごしてきた時間と深く結びついていたはずの電話番号もメールアドレスもすべて消えてしまった。仕方なく新しい携帯を契約して、まっさらなアドレス帳を見ながら少しばかり呆然としてしまう。過去が消えてしまった時間の積み重ねだとしたら、僕はどれだけ多くのものをなくしてきたんだろう。