風邪

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 目が覚めるのと同時に風邪をひいてしまったのがわかった。鼻の奥の方に嫌なにおいが漂っていたし、喉に何かが張り付いているようだった。紅茶を飲んでも熱いシャワーを浴びてもそれは取れず、諦めて気づかないふりをすることにした。

午前中の仕事が終わるまではうまくごまかせていたけれど、新幹線に乗った途端に20歳くらい歳を取ってしまったような気になった。乗り換えを入れると、これから5時間以上も移動しなければならない。そんなに長いあいだ狭い車両に閉じ込められるのは考えただけでもうんざりすることだったが、すぐにだるさの方が勝って眠ってしまった。

それから目が覚めるごとに体は熱っぽくなっていった。むかし理科の授業で習った100m下るごとに規則正しく気温が上がっていく法則でも働いてるみたいだった。そんなことを思いついて、またすぐに眠くなってしまう。その繰り返しで2時間ほどが過ぎた。

乗り換えるために降りた駅は人が多くて5メートルおきに誰かにぶつかりそうになる。たぶん僕がふらついてるんだろう。

唐突に、昔のことを思い出す。どこかで同じことがあった気がする。それがデジャヴなのか薄れた記憶なのかすらよくわからなくて頭がぐるぐるする。

薄暗い部屋

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薄暗いビジネスホテルの部屋は気が滅入る。狭さはほとんど気にならないけれど暗さはどうにもいけない。

仕事をする気にも本を読む気にもなれず、ベッドの上で壁にもたれてぼうっとする。

 いつの間にか眠っていたようで、首が痛くて目がさめる。

空気を入れ替えたいと思うけれど、どうせ窓は固定されてるんだろう。新鮮な空気を吸うことすら許されない夜はただ寂しい。

レイトショー

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レイトショーには、僕のほかには2人の客がいるだけだった。

平日の夜で、外はひどい雨が降っていた。

ポップコーン売り場の女の子は暇を持てましてくるくるまわる機械を眺めていた。ソファに座った僕も同じようにいつまでもまわり続ける機械を眺めていた。なんだか映画よりもその機械の方がおもしろい気がしてきてそのままずっと座っていようかと思う。雨降りの夜に回り続けるポップコーンマシン。誰かそんな映画を作ればいいのだ。

 

 

日曜の夕方

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日曜の夕方がわりと好きなんだけれど、彼女にとってはたぶん消えてしまいたいほど嫌なんだろう。連絡しようと思うけれど、どんな風に声をかければいいかわからなくて、ぼんやりと考えながら遠い国のラジオなんて聞いている。言葉はほとんど聞き取れないけれど、ざわめきとリズムが心地よかったりする。彼女も自分と流れていく時間と消えていく言葉にだって楽しみはあるということを感じられたらいいなと思う。