天気読み

 天気読みはまず空を見上げて雲の色と形を探り、それからぺろりと舌を出して風の匂いをかいだ。しゃがみ込んで手のひらをぺたりと地面につけ、土の温度と湿度を感じた。はっぱの裏側も覗いてみたし、井戸に小さな石を投げ込んでその音に耳を澄ませることもやった。いつもならうるさいほどの蝉の声がちっとも聞こえず、列をつくっている蟻の群も見あたらないことが天気読みに不安を感じさせていたのだけれど、事態は彼が漠然と感じていたよりもずっとまずい方向に進みそうだった。しかし天気読みになったばかりの彼にはこれから何が起きようとしているのか具体的な姿を描くことはできなかった。そのことが彼をますます不安にさせた。