南からの手紙

 あさって砂浜にツリーを立てに行きます。鉢に植えられた樅の木はちょっとびっくりするくらい大きくて、夜が明ける前に海まで運べるか少し心配です。夏のクリスマスなんて、とあなたは言うかもしれません。最初の年はわたしもそう思いました。クリスマスという言葉の響きと眩しい太陽の日差しにとても違和感を感じたし、街中大騒ぎで少しもロマンチックじゃないし、自分だけが置いてきぼりにされたような、あるいはみんなに担がれているような、そんな気分になりました。ずいぶん昔のことだけれど、今でもまだ少しだけそんな気がします。浜辺のツリーにはたくさんの貝殻を吊します。名前は知らないけれど、白くて薄くて平べったくてすべすべした貝です。今の季節は夜明けに風が吹くから、きっときれいな音を立てるでしょう。それがあなたへのプレゼントです。メリー・クリスマス。素敵なクリスマスを。