土曜の午後の紅茶

「僕は土曜日の午後の紅茶が一番好きだな。透き通ってるから」
「透き通ってる?なにが?」
「色も味も香りも。空気も音も、なにもかもさ。そうは思わない?」
「少しだけわかるような気はする」
「少しだけ?」
「そう、少しだけ。だって私はあなたじゃないもの。すべてをわかることなんてできないと思うの」
「でも少しはわかる?」
「うん、少しはわかる。少しじゃ不満?」
「そんなことはないさ。十分すぎるくらいだよ」
「ねぇ」
「なに?」
「お茶にしない?」
「いいね。僕もそう言おうとしてたところさ」