彼の世界

 手紙がポトンとポストに投げ込まれたとき、彼は庭で芝生に水を撒いていた。電話のベルがリンリンと鳴ったときには、ヘッドホンを耳に当てて古いLPレコードを聴いていた。ドアノッカーがカンカンと音を立てたときには、シャワーを浴びていた。そういうわけで、彼の世界はいつだってしんとしていた。