020701

 僕は窓際の席に座っていたから木の枝が揺れるのがよく見えた。枝々は決して一様に動いているわけではなく、一斉に一方向にたなびいたかと思うと次の瞬間には互い違いの方向を向いた。一枚一枚の葉は独立した動きを見せていて、より複雑なパターンをいくつもいくつもつくりだしていた。それはよく訓練された何千人もの小人によって行われている緻密なマス・ゲームのようだった。

 対照的に、天井に埋め込まれたスピーカーから流れてくる声はひどく退屈な話を続けていた。平板で、そのくせ曲がりくねっていて行き先のない退屈な話だった。路地裏に迷い込んだ野良犬が抜け道を探すように僕は視線をめぐらせ耳を澄まし空想を働かせたけれど、結局いつのまにかまたぼんやりと揺れる木々を見つめているのだった。