光射す海
結局のところ、彼女は僕を求めているわけではなかったし、僕も彼女を求めていたわけではなかった。ふたりとも何かの隙間を埋めるためのささやかなぬくもりが欲しかっただけなのだ。そして、そのことに気づかないふりをしていただけだった。
それでも僕はそれなりに傷ついたし落ち込みもした。そんな喪失感は今までだって何度も感じてきた。今回が特別なわけではない。いつもそうだ。いつも僕はひとりで残される。
たまらなく誰かと話がしたかったけれど、その相手さえいない。それもいつもと同じだった。
もう何十回読んだかわからない本を開く。それが痛みを和らげる一番簡単な方法だった。僕は孤独と喪失感を紛らわせることに関してはベテランなのだ。ちっともうまくならないけれど。