酔っぱらい

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肩を叩かれ目を覚ます。気がつけば終点で乗客は数人しか残っていない。折り返しの電車はなく、タクシーも捕まらない夜道を延々と歩く。
ふいに電話が鳴り、切れる。再び鳴る。また切れる。鳴る。そしてようやく繋がる。
電話の向こうからは小さな声が聞こえてくる。耳をすます僕にその声は深く染み込んでいく。
どこにいるの?と僕は訊ねる。あなたはどこにいるの?と訊ねられる。
僕はうまく答えられない。僕はどこにいるんだろう。酔った頭はぼんやりしている。僕はどこにいるんだろう。
電話の声は言う。今からおいで。
頷く僕の頬を夜風が撫でていった。