誰かが僕のドアをノックした

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森/アイルランド

 

 誰かがまた僕のドアをノックした。トントントン。とても優しい叩き方だったけれども、僕はドアを開けなかった。僕のドアはいつだってかたく閉ざされているのだ。真冬のシベリアの木こり小屋のように凍りついているから、開けたくても開くことができない。だけどシベリアにもいつか春がやってきて、それはとても短い春だけれども、木々に積もった雪を落とし、大地を覆った氷を溶かし、眠っていたキツツキの目を覚まさせる。キツツキは木を叩く。トントントン。みんなその音で目を覚ましてドアを開ける。トントントン。だけど僕は寝坊した穴グマだ。いつだって春が来たのに気づかない。