葬儀と太陽

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教会/パリ

5月の土曜日にふさわしい明るい日差しが新緑を照らしている午後に、僕は鏡を見ながら黒いネクタイを締めている。さっきまで黒い靴下が見つからずに引き出しをひっくり返していたせいで、時間の余裕はなくなっている。だけどネクタイはうまく結べず、また最初からやり直す羽目になる。葬儀に向かう時はいつもそうだ。
なんとか間に合った式はひどくさみしいものだった。残された妻は憔悴しきっており、母親は気丈に振舞ってはいたが仕方ないという言葉を繰り返すだけだった。まだ小さな女の子だけがみんなから優しくされてにこにこしていた。参列者は多くはなく、一様に言葉少なだった。
会場から出ても、5月の太陽は暖かな光を放っていた。太陽の光だけは、死者にも残されたものにも平等に降りそそぐ。