大人になるということ

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夕暮れ/アイルランド
 
買ったばかりのネクタイを結ぼうとしてうまくいかず、何度もやり直す。
相変わらずネクタイは苦手だ。鏡の中に写った姿は僕ではないみたいだ。薄い薄い仮面をかぶった偽物の僕がそこにいる。誰も偽物だとは気がつかないほどよく似ている。僕だって気づかない。
ネクタイをしているのはみんなきちんとした大人だと思っていた遠いむかし、世界はもっと単純にできていた。そんなところに戻りたいとは思わないけれど、ネクタイなんて世界からなくなってしまえと思う。