雨を歩く

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古い街並みを歩く。
数寄屋造りの商家や銀行として使われていた洋館が素晴らしくて、別のものを見に来たはずなのに、僕の目に入るのは優雅なカーブを描く手すりや梁に飾られた銅製の家紋やそんなものばかりだ。
そんな古い建物を縫うように歩いていると雨が降りだし、傘を開く。
通りには甘い焼き菓子やお茶の香りが漂っているが、それが途切れたところでは急に雨の匂いが感じられる。
だけど西の空は、やがて雨は止むだろうと思わせる明るい光を放っている。
まもなく雨は止むだろう。
雨が止んだら、と僕は思う。
雨に濡れた菜の花を見に行こう。
黄色い絨毯を敷き詰めたような河川敷に行こう。
緑の匂いを嗅ぎに行こう。