2014-02-27 暗闇と光 日々 恋人たち/パリ 僕はうまく眠れなくて天井を見つめていた。 真っ暗な部屋の中で、ときどき通りを走る車のライトが反射して天井に映った。天井の光は弱々しくてすぐに消えた。あとには車の走り去る音と闇だけが残った。それが何回も繰り返された。 いつだったかずいぶん前に同じようなことがあったような気がした。記憶の隅っこに何かが引っかかっていた。僕はゆっくりと時間をかけてそれを引っ張り出そうとしてみたけれど、掴んだと思ったものはシャボン玉のようにすぐにはじけて消えてしまった。 春が始まりそうな夜だった。