記憶


高速バスに3時間も揺られると体がきしきし言った。
ステップを降りて大きな伸びをする僕を見て、通りすがりの女の子たちがくすくす笑った。
どこから見ても、私たち修学旅行でやってきましたとアピールしている3人組の女の子だった。
僕を見て笑い、地面で餌をついばむ鳩を見て笑い、車に進路をふさがれた路面電車を見て笑った。
僕にもそんな時代があっただろうか。
記憶を引っ張り出してみようとしたけれど、出てきたのは大きなくしゃみだけだった。