貸し切り


どういうタイミングなのか、真夜中の都市高速には一台も車が走っておらず、街灯とビルの明かりだけが現実世界がそこにあることを表しているように思えた。
雨はもう上がっていて濡れたアスファルトがきらきら光っていた。
「世界が貸し切りみたいね」と彼女は言った。
僕はそうだねと頷いた。
それからしばらくタイヤの音と小さく流れるラジオの音だけが狭い空間を支配した。
「ねえ」とふいに彼女は言った。
僕はその続きを待ったが、彼女はそれきり黙ったままだった。