秋のはじまり


秋はいつだって突然に僕たちの目の前に姿を現して、どこかに何かを忘れてきてしまったような気分にさせる。
実際には毎日多かれ少なかれ何か忘れ物をしながら僕たちは生きているわけで、秋になろうと春になろうとそれが変わるわけでもなく、雲が流れるように生活は流れていく。
特にそれを不思議に思ったり特別なものとしてとらえる必要はないはずなのに、今年も僕は秋のはじまりにはそう思い、そして同時にそれは何かしら心地よいものを含んでいたのだった。