冬に歩く

 いつの間にか僕の足下では風に舞った枯葉がカサカサと音を立てていた。いつもの年と同じように冬は僕らが気づかないうちにこっそりとやってきていた。冬はときおり強い風を吹かせ、わずかばかり残っていた木の葉を散らせた。あるいは乾いた雪をほんのちょっぴり降らせたりもした。僕は冬のはじめ、10年間着続けたダッフルコートを捨て、新しいダッフルコートを買った。そして默って落ち葉や雪を踏みながら歩いた。たくさん歩いた。強い風が鹿の角でできたダッフルコートのボタンを外し、裾をひらひらと揺らした。それでも僕は歩き続けた。風に吹かれたチラシや薄く張った氷や誰かが残した足跡や、多くのものを踏みつけて歩いた。だけど、どれだけ歩いてもその冬が終わることはなかった。僕の両手はずっとポケットの中に入ったままだった。