B&B in Banagher


Birrの町に着いたのはもう5時を回っていた。結局止むことのなかった雨の粒はだいぶ小さくなっていたけれど、なんだか一日ずっと動くワイパーばかり見ていたような気がした。そんなわけで、予約していたゲストハウスのベルを鳴らしたときには、僕の頭の中では熱いシャワーと冷たいギネスが交互にバトンを交換しながらリレーをしていた。

「今晩予約してるんだけど」と言った僕の名前を聞いて、彼女は何度もページをめくった。そして「悪いけど、もう一度名前を言ってくれる?」と言った。予約のやりとりをしたE-mailのコピーを見せて名前を指さした僕に返ってきた言葉は、「悪いけど予約は入ってないわ」だった。

彼女の言い分はこうだった。ここに書いているように確認のファックスにカード番号を送ってもらう必要があったのに、それが送られてきていないから、予約は入っていない。今日はあいにく満室で部屋は空いてない。

ファックスはきちんと送ったと僕は言った。ほら、これがそのコピー、と。

彼女はそれを見て受け取っていないと言った。一週間くらいファックスの調子が悪かったからね、と付け足した。

やれやれ。

OK、それじゃあどこか宿を紹介してくださいよ、と僕は言った。とにかく早く熱いシャワーが浴びたかったのだ。

彼女は「この町はとても小さな町だし、今日と明日はフェスティバルだからどこも空いてないかもしれない」と言いながら電話をかけてくれた。断られるたびに、チッチッチと舌を鳴らしながらまた電話のボタンを押した。4軒ほどかけたところで、彼女は僕に言った。「他の町を探した方がいいと思う」

「どこに行ったらいい?」と地図を見せながら訊ねた僕に彼女が指さしたのは50km以上離れた大きな街だった。「ここならホテルがたくさんある」そう言った。

僕はあきらめて頷いた。わかった、何とか探してみるよ。そう言うと彼女はほっとしたように、悪いわね、本当にごめんねと言った。

アイルランドにはB&Bがたくさんあるから、泊まるのに困ることはない。ただ、問題なのは今が8月のハイシーズンで、週末で、すでに5時半を過ぎているということだった。とりあえず、もう一度車に乗り込んで地図を広げた。彼女が教えてくれた街まで行く気にはとてもなれず、とりあえず適当に当たりをつけて車を走らせる。

そしてシャノン川のほとりの近くの小さな街のB&Bに空き部屋を見つけた。古い鍛冶屋という名前のB&Bだった。