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「花屋になりたかったの、ずっと昔のことだけどね」と彼女は言った。そして、「ありふれた夢でしょう」と笑った。
「もう花屋にはなりたくない?」と僕は訊ねた。
「今はね」と彼女は言った。
「どうして?」
「どうしてかな」と彼女は言い、少し考えてから「よく知らなかったのよ、たぶん」と言った。
「知らなかった?何を?」
「いろんなことを。なにもかも」と彼女は言った。