悲しき雨音

 彼女の左手には三つの指輪がつけられていた。人差し指と中指と小指だ。右手にはひとつもない。僕は一度指輪の意味を訊ねたことがある。意味なんてないわよというのが彼女の答えだった。あなた、コーンフレークに特別な意味を見出せる?と彼女は訊ねた。真剣に考えれば三つほど思いつくような気がしたが、僕はいやと答えた。彼女が言ってるのはたぶんそんなことではないのだ。彼女はそうでしょうと満足そうに頷いた。それから僕らはジューク・ボックスにコインを入れ、カスケーズの古い曲を聴いた。とがった羽根がついていて、中で四人家族が何ヶ月も生活できそうなくらい大きな車がたくさん走っていた時代の曲だ。僕は途中から曲に合わせて口笛を吹いた。彼女は満足そうににっこりと微笑んでいた。