帰館


 狐狩りから帰ってくると必ず暖かいミルクを飲むのが彼の習慣だった。緯度の高いこの土地では秋の夕暮れは早く、陽光は3時にはその輝きを失い始める。午後の光が透明度を失うにつれオレンジ色が勢いを増し、やがてそのオレンジも紫がかった闇に取って代わられる。太陽が三分の一ほどを残して地面の下に隠れてしまうころから、森には薄い靄が漂い始める。犬の鳴き声が聞こえてくるのは決まってそのころだ。僕はたいてい暖炉のそばに座って本を読んでいる。最初は遠くからかすかに聞こえる犬の声は次第に大きくなり、それからまた小さくかすんでいく。それは再び近づき、そしてまた離れる。その周期はだんだんと短くなる。たぶんゆっくりと歩いている彼とこの家の間を往復しながら、少しずつ近づいてきているのだろう。やがてガリガリとドアを爪でひっかく音が聞こえてくるはずだ。そろそろ暖炉の上のミルクも暖まったころだろう。僕は本を閉じ、杖をとってゆっくりと立ち上がった。