040907

 仁川国際空港はとにかくもう広い。ひょっとするとこの飛行機は浮かんでいる時間よりも、着陸して(あるいは離陸するために)走っている時間の方が長いんじゃないかと思えたりする。

 チェックインを済ませ、手荷物検査と出国手続きが終わってしまうと、ひどく時間が余った。

 カフェでカプチーノを頼む。ここのレギュラーコーヒーは味覚障害になってしまったんじゃないかと心配になるほど薄すぎるし、エスプレッソは喉がおかしくなるくらいとげとげしい味がする。カプチーノはたっぷりのパウダーシナモンが効いていて、唐辛子とニンニクに馴染んだ体に少し控え目な甘さが染み込んでいくのがよくわかる。誰もいないゲート前のベンチを探し、横になって本を読みながら時々カプチーノをすする。何のためにわざわざ韓国まできたのかわからないような仕事だった。空港の広さとソウルの喧噪を改めて実感することにだけ役に立ったような気がする。

 三日後に僕はまた広すぎるこの空港に来ることになる。そして、たぶん同じようにデイパックを枕にしてカプチーノをすすることになるのだ。