040113

 長い旅を続ける人々は時に沈没してしまうという。めまぐるしく変わる環境にも慣れ新しいものへの好奇心が薄れはじめたころにそれはやってくる。旅を続ける理由がわからなくなり、自分の行動に意味を見出せなくなる。移動を続けるエネルギーをなくし、変化していく意思を失う。一カ所にとどまり、部屋にこもり、真ん中が窪んだベッドに寝そべる。雲を眺め、誰かが流した水の音を聞き、薄い壁越しに通りの喧噪を感じているうちに今日は過ぎていく。そして、明日も、あさっても。
 ひょっとして僕の日々は沈没しかかっているんじゃないかと時々思う。太陽は飽きもせず東から西へと移動している。そのあいだに、僕は何をなすべきなのかよくわからない。太陽ほど勤勉にはなれない。