030512

 新しい髭剃りの刃をずっと切らしたまま、僕はすっかり鈍くなった剃刀で髭を剃り続けている。そのせいであごの先にはところどころに剃り残しや赤くポツポツとしたかぶれができてしまい、毎朝それを鏡で見ながら今日こそは新しい刃を買わなくちゃと思い、だけど結局そのまま忘れるなんてことの繰り返しで日々は過ぎていく。髭なんてほんとは剃りたくないんだとかなんとか言って自閉的な反抗をしてみるほどもう若くはないし、かといって二、三本だけ奇妙に伸びた剃り残しの髭に無頓着になれるほどニヒリスティックに生きられるわけでもない。

 忘却の積み重ねとともに時間は流れる。忘れることこそが時間を作り出しているのかもしれないなんて思ったりもする。