020330

 ポケットに入ったコインをもてあそびながら信号待ちをしている僕の足もとでアスファルトから伸びたタンポポが小さく揺れている。春の空気は僕の黄色いパーカーの中にも入り込み、けだるさと不安さを醸成させる。

 僕の5メートルばかり上空に浮かんでいる春はやわらかい風を送り出し、僕の前髪とタンポポを揺らす。信号が青になり、僕は歩き出す。ポケットの中のコインはかちゃかちゃと音を立てる。タンポポは僕のうしろできっとまだ揺れている。