020115

 朝、目が覚めてみると街は霧に包まれていた。それは本当に濃い霧で、道を挟んだ向かい側のマンションの壁は乳白色のぼんやりとした光に覆われてまったく見えず、ただ窓の位置だけが黒いシルエットとしてほのかに浮かび上がっている。空気は冷んやりと湿っていて、冬の朝の肌を刺すような尖った感じはどこにもない。霧はとてもゆっくりと流れていて、そのせいで街全体に薄い模様が描かれているみたいだった。模様はゆらゆらとかたちを変えた。僕の眼はいつまでたってもうまく像を結ぶことはできず、視線は宙をさまよいつづけた。ゆっくりと動くひどくあいまいな白い模様とぼんやりと浮かんだ黒いシルエットはロールシャッハのしみのようにいろいろなものごとを想像させ、それは少しずつ僕を混乱させた。まだ朝は始まったばかりだった。