スーパーマーケットの夜更け

 夜中のスーパーマーケットにはいろんな音が漂っている。ジーというのはたぶん非常口を示す緑色のランプが切れかかっている音で、ブーンというのは冷蔵庫のモーターが回っている音だ。さらに耳を澄ますと壁の中を伝わる水の流れるような音が聞こえる。ときおりガサガサという音が伝わってくるときもあるが、それはたぶんネズミだろう。よく考えてみれば時が過ぎるのは早いもので、僕がスーパーマーケットで暮らすようになってからもう4ヶ月が過ぎた。その間に僕は毎日ひとつずつフルーツを盗んで食べ続けてきた。きっかり一個だけだ。リンゴを一個、オレンジを一個、キウイを一個というふうに。イチゴを一粒というのはもの足りない気がしたし、スイカをまるごとひとつ食べるのはひどく苦労したけれども、そういうふうに決めたのだからしかたがない。僕はこう見えてもけっこう意志の力が強いのだ。そうでなければ真夜中のスーパーで4ヶ月も暮らしたりしない。さて、今日は何を食べよう。