セニョール・ドミンゴ

 彼のしゃべりはあまりに早すぎて、僕は西部劇に出てくるメキシコ人と向かい合っているような気分だった。何を言っているのかさっぱりわからない。そんな僕のことにはおかまいなしに彼はしゃべり続けた。最初は默って聞いていたのだけれど、そのうちだんだん腹が立ってきた。ついに我慢ができなくなって、僕は彼に飛びかかり押さえつけた。マジックで口髭を書き、ポンチョを着せ、メキシカンハットをかぶせた。その間も彼はもごもごとしゃべり続けていた。そうしてしまうと僕はにこやかに彼の話を聞くことができた。彼もとても嬉しそうにしゃべり続けた。