また変な時間に眠ってしまって...

また変な時間に眠ってしまって目が覚めたのは夜中の2時半だった。相変わらず嫌な夢を見ていた気がする。 シャワーを浴びて少しだけすっきりしたけれど、仕事をする気にも、本を読む気にもなれず、結局冷蔵庫を空けてビールを取り出す。非生産的な一日の非生…

古いアルバムを聴くのは決まって夜中だ。 本棚から引っ張り出してきたCDのケースには少し埃が積もっている。 あるいは、それは記憶に積もった時間なのかもしれない。

嫌な夢で目が覚めて、いつの間にかソファで眠っていたことに気づく。 首が変なかたちに曲がっていたのか、ひどく肩がこっている。つけっぱなしだったテレビだけが暗い部屋を照らしている。時間の感覚が少しおかしくて、時計を見ても今が夜なのか夜のふりをし…

5月の日曜

いつ以来か忘れてしまったくらいに天気のいい日に休みが取れて、外に寝転がって昼間からワインを飲みながら本を読む。風は心地よいというには少し強く、指で押さえたページがパラパラと音をたてる。 本を読むのに疲れてそのままうたた寝をする。目が覚めたの…

午前1時20分、ベルが鳴る

電話が鳴ったのは夜中の1時20分だった。たまたま手に持って操作していたiPhoneに表示されたのはずいぶん懐かしい名前だった。彼女から電話がかかってきたのなんてもう15年以上も前のことだった。 そのころ彼女はときどき思い出したように電話をかけてきた。…

夜の

夜中に外に出てビールの缶を開ける。月は霞んで見えない。遠くになった風景を思い出す。

残されたもの

パブ/アイルランド 小さなパブのカウンターには誰かが飲んだワイングラスがひとつだけ残されていた。

偽りのない風景

羊と対岸の街/アイルランド

いつか見た空

海外に行くと、彼の地の画家が描いた空は本当にそんな色をしているんだといつも思う。 オランダの小さな町に生まれ一生涯をそこで過ごした画家はずっとこの空を見ていた。 400年近く前の画家の絵によって空の青さを知る。 僕たちはどんなに長く生きたってす…

ポスト

哲学者に言われなくても、僕の出した手紙がどこに届くかわからないなんてことはわかってる。

空の彼方

過ぎて行く日々に埋もれていくもの。 記憶と感覚。

3年か4年ほど同じ時間を過ごした若い友人が旅立っていき、そして挫折して戻ってきた。 数ヶ月ほどアパートの狭い部屋で音楽を聴きながら涙を流す無為な日々を送っていた。落ちていく感覚と不安と劣等感に苛まれながらただじっと時間が過ぎるのを待っていた…

秋と冬の間

秋と冬の間がやってきて少しわくわくする。

秋の桜

桜の葉が色づき始めていた。それは同時に散り始めていた。緑とオレンジのコントラストが綺麗だと思う。今までに何度も見たことがあるはずなのに。気がつくのはいつも通り過ぎたあとだ。

百数十年に一度という月はたしかに美しかったけれど、月の光で作られた影はもっときれいだった。僕は外に出てしばらく月の影を眺めていたけれど、さすがに寒さに耐えられなくなって部屋に戻った。灯りをすべて消してブラインドを上げてしまえば、また月がき…

海と空

沖縄に向かう朝、空には見たことがないほど長い飛行機雲が浮かんでいた。写真を撮ろうかと思って、やめた。それはもう使い道のない風景だった。

朝焼け

いつも明け方に目が覚める。たいていはいやな夢を見ている。今日もそうだった。薄いカーテン越しに朝焼けの空が見えた。朝焼けは寝不足の目に眩しすぎた。目の奥がしくしく痛む。北に位置するここでは一日が早く始まる。短い夜の間に考えられることは少ない…

夜明けの雨

運河/アムステルダム明け方に雨が降った。その音で目が覚めた。運河に雨粒がいくつもの波紋を作っているのがホテルの部屋から見えた。身体を遠いところに運べば何かが変わりそうな気がしたけれど、そう簡単にもいかない。昨日の夕暮れ、運河を見ながらそん…

廃墟/アイルランドひとつずつ失われて行くものに抗いたくなるけれど、時の流れだけが正しいと信じるしかないのかと思う。けれども、消えていくつながりはどうしようもなく耐えがたく、眠れない夜にはウイスキーを舐める。間もなく夜が終わり新しい日がやっ…

眠る日々

綿菓子/フランスここ数日体調が悪く、ひどく眠い。仕事場では居眠りを繰り返し、夕食を食べては眠り、変な時間に目を覚ましてシャワーを浴びてまた眠る。そしてまたひどく疲れる。その繰り返しが続く日々。雨もまだ止まない。

廃墟/アイルランド夢の中で僕はすごく焦っている。最終のバスに乗り遅れそうになっている。見覚えのない住宅街を酔って走っている。初めて通る道なのにこの先にバス停があって、もうすぐバスが来ることを知っている。間に合わないかもしれないと焦っている…

届かないもの

風に吹かれる/アイルランド 何度も繰り返されてきたことがまた繰り返される。 祈りもまじないも気持ちもどこにも届いていない。届かない。たぶん悲しみですら届かない。

祈り

床/パリ神様なんて信じていないのに、時々祈りたくなった。お祈りでもおまじないでも何でもする気になった。そんなことしても意味がないこともよくわかっているはずなのに。満月に少し足りない夜に。

捨てる

パブ/アイルランドクローゼットをかき回していらない服を選り分け、床に積み重なっている本を箱に詰め、埃をかぶった書類をひとまとめに括る。ここ何日かひたすら捨てるものを探している。見るともなくつけっぱなしテレビのニュースが、大きな台風がやって…

梅雨の終わりの電話

教会/パリ 遠くで雷が鳴っていて、梅雨の終わりを感じる夜。稲光がカーテンの隙間から部屋を照らし出した瞬間に携帯が震えて僕は驚く。か細い声は雨の音にかき消されそうで、携帯電話を強く握りしめる。伝えたいことも聞きたいこともたくさんあったけれど…

二日酔い

ギネス/アイルランドひどい二日酔いで目が覚める。もう外は明るくなっていて、きちんと閉められていないカーテンの隙間から漏れる光が瞼も眼球も透過して頭蓋骨の奥深くまで差し込んでくる。日曜日なんて無くなればいいと思う。

嘘つき

いつものように仕事場に行き、いつものようにパソコンを開く。 そしていつものようにスケジュールを開き予定を確認して、そこに休みという文字を見つけ、それがもう必要なくなった情報だということがうまく理解できず、僕はしばらくぼんやりする。 いくつか…

午睡

草原/アイルランド日曜日の午後、風が入る部屋で眠る。朝の苦さが静かに消えていく。素敵な贈り物を手に入れた素敵な午後。

酔っぱらい

パブ/アイルランド肩を叩かれ目を覚ます。気がつけば終点で乗客は数人しか残っていない。折り返しの電車はなく、タクシーも捕まらない夜道を延々と歩く。ふいに電話が鳴り、切れる。再び鳴る。また切れる。鳴る。そしてようやく繋がる。電話の向こうからは…

路地裏の発見

カラス/アイルランド見知らぬ場所を歩くのが好きで、狭い路地ばかりを散歩したりする。そんな楽しさをわかってくれる人がいたら素敵だと思ったりする。